遺言書は、形式的なルール違反があれば無効となり、内容面での遺漏やミスがあると相続人または受遺者の間でトラブルにつながりかねません。
遺言は、遺言者が亡くなってから効力が生じるものです。
いざ、遺言書の内容を実行しようとしたときに、形式面や内容面での不備があったとしても、手遅れとなります。
そのため、遺言は、簡単そうに見えて、案外難しいのが遺言です。
当事務所では、遺言書の作成をご検討される方に対して、作成支援のコンサルティングを行っております。
遺言を作成される方のご意向を踏まえながら、安心して作成できるようにお手伝いいたします。
民法が定める遺言書の通常の方式は、3種類あります。
※特別な方式の遺言については、ほとんど利用がないと思われます。参考として、このページの末尾に概略だけ掲載しています。
種類 | 概略 |
自筆証書遺言 (民968) |
原則)全文、日付及び氏名を自筆し、押印した遺言書。 ※財産目録について例外あり。 ※法務局で保管できる制度あり。 |
公正証書遺言
(民969) |
公証役場で作成される遺言書。証人2名以上の立会いが必要。原本は公証役場で保管される。 |
秘密証書遺言
(民970) |
作成した証書に署名・押印し、封筒に証書を入れて、証書で押した印鑑で封印したもの。公証人及び証人2名以上の前に封書を提出して署名・押印することが必要。
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民法で定めた方法に従っていない遺言書は、無効と判断される場合もあります。
せっかく作った遺言書が無効だと悲しいですよね?
【ご参考】
法務局で遺言書を保管できる制度が始まりました。
しかし、この制度は、『自筆証書遺言』の保管方法に関する制度です。
そのため、民法が定める遺言書の種類に変更がされたわけではありません。
遺言書作成時に、次の要件を備えておかなければなりません。
15歳以上
事理を弁識する能力を一時回復し、医師2名以上の立会いが必要。
遺言能力について、民法上の定義はありません。
「遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識し得るに足りる遺言能力が必要」とされています。
「遺言書の種類」で掲載したとおり、遺言書の種類によって形式が異なります。
例えば、自筆証書遺言であれば、財産目録を除き、パソコンで作成したものはダメ、全文自筆でないといけない、などです。
「たかが形式の不備でしょ?」と思われるかもしれません。
しかし、形式面で不備があると、せっかく作成した遺言が無効となりますので、ご注意ください。
公正証書遺言または自筆証書遺言(法務局での保管制度を利用した場合に限る。)では、形式面において、公証人または法務局がチェックしてくれるので、形式面での不備は少ないと思います。
矛盾した内容であれば、後日紛争トラブルになります。
同一の遺言書内で、たとえば夫婦それぞれの遺言をすることは禁止されています。
遺言書において相続財産を承継する方は、必ず遺言者が死亡時には生存していなければなりません。つまり、承継される方が先に亡くなってしまうと、その部分は無効になります。
遺言書を何通も作成することは可能です。
しかし、先に遺言書を作成されているのであれば、先に作成された遺言書との矛盾があるかどうかの確認が必要です。
相続人が複数いる場合に、例えば一人の方のみに遺産のすべてを相続させる遺言書を作成したとします。
その他の相続人の方は、遺留分(一定の割合の遺産)を請求する権利を有することになり、トラブルの元になる可能性があります。
Q1
一度作った遺言書を修正するはできますか?
A1
できます。
Q2
先に作成した遺言書の修正(撤回)方法を教えてください。
A2
まず、遺言書は、重複する内容については、後に作った遺言書のほうが有効となります。
先に作成した遺言書(「第1の遺言書」といいます。)とは別に、新たに遺言書(「第2の遺言書」といいます。)を作成して、第1の遺言書の内容を修正(撤回)することができます。
第1の遺言書の一部について抵触する内容を、第2の遺言書で記載した場合には、その抵触する内容部分に限り、遺言を撤回したものとみなされます。
ここで注意したほうが良いことは、後々のトラブルを避けるために、第2の遺言書において、第1の遺言書の「○○を変更する」など、変更内容を具体的に記載することです。
また、例えば、第1の遺言書は公正証書で作成し、第2の遺言書は自筆証書とすることも可能です。
上記の他、遺言者が故意に遺言書を破棄したときにも、遺言は撤回されてものとされます。
Q3
3種類の遺言の方式のうち、お勧めはどれですか?
A3
ブログにまとめましたので、ご覧ください。
法務局における遺言書の保管1(遺言書保管制度のメリット・デメリット) ~遺言書の作成や遺言書の見直しを検討されている方に~
Q4
開封済みの自筆で書いた遺言書を発見しました。
また、内容も無効なものと思われますが、遺言書の検認は必要ですか?
A4
開封済みであるか否かは問題でありませんので、原則とおり必要です。
遺言書の検認手続きは、遺言書の有効/無効を判断する手続きではありません。仮に無効と思われる内容であっても、遺言書が存在する限り、遺言書の検認手続きは必要です。
万が一、遺言書の有効か無効かを争う場合や偽造が疑われる場合は、裁判所で決着をつけることになります。
Q5
自筆証書遺言の作成を考えています。
保管方法に特別な定めはありますか?
A5
法務局に保管する制度を利用しない自筆証書遺言の場合、保管方法に関する特別な定めはありません。
その他特別な方式の遺言として次のものがあります。
しかしながら、実際のところ、作成を支援したことも、作成された遺言書を見たこともありません。
従って、皆さまが作成されるのは上記の「普通方式」の遺言書になると思われます。
種類 | 概略 |
死亡危急時遺言 (民976) |
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った場合に、作成できる遺言。証人3人以上の立会し、うち一人が遺言者から聞いた遺言の内容を筆記する。遺言を作成した日から20日以内に、家庭裁判所で確認の必要がある。 |
伝染病隔離者遺言 (民977) |
伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にいる方が作成する遺言。警察官1名及び証人1名の立会が必要。 |
在船者の遺言 (民978) |
乗船中に、船長または事務員1名及び証人2名以上の立会をもって作成する遺言。 |
船舶遭難者の遺言 (民979) |
船舶が遭難した場合に、乗船中の方に死亡の危急に迫った場合にできる遺言。証人2名以上の立会いの下、口頭でできる。その後、証人が筆記して、署名・押印の上、家庭裁判所で確認の必要がある。 |