とあるご相談から・・・
Aさん「父が施設に入って、もう自宅に戻れそうにないから自宅不動産を売却したいんだけど、どうしたら良いでしょうか?」
私「お父様は何歳でしょうか?また、状態、つまり、ご施設に入所された理由は何でしょうか?」
Aさん「父は85歳で、認知症です。」
私「断定はできませんが、おそらく成年後見人選任の申立をしないといけないと思われます。成年後見人が選任されたとしても、自宅不動産を売却できるかどうかは不明です。」
問題の所在
親に代わって、子供たちが、親の不動産の売却を進める、というお話はよくあることです。
しかし、親の生存中は、所有者である親が主体となって売却を進めないといけません。
したがって、不動産の所有者である親に、
- 売却する意思があるか?
- 売買契約ができる判断能力があるか?
の2点を、最低限、確認する必要があります。
上記相談事例を当てはめると、次のとおりです。
- 所有者の売却意思は確認できない
- 認知症などで判断能力が低下した場合は契約のことを判断することができない(可能性が高い)
判断能力が低下していた場合はどうなるのか?
認知症などにより精神上の障害により、判断能力が低下された方は、ご自身のされた契約が、どういう結果になるのかよく理解できません。
そのため、「売却したい」という意思の確認のみならず、単独ではその契約を進めることができません。
このような場合に、成年後見制度を利用することになります。
成年後見制度を利用した場合
現在、成年後見制度は、本人が平穏に暮らせるように財産を保全することが目的となっています。
そのため、成年後見人が選任されると、次のように財産が流出するようなことができなくなります。
- お子さんやお孫さんに財産を贈与(お小遣いを含む)
- 積極的な資産運用
- 保有している不動産(特に自宅)や株式などの財産を売却・解約などの処分
- 定期預金の解約
また、事実上、遺言書を作成することもできなくなります。
つまり、せっかくの資産が凍結状態になり、自由に本人の財産を活用する事が出来なくなります。
なお、施設入所費用に多額の費用がかかり、どうしても自宅不動産を売却しなければ費用を捻出できない場合には、売却することは可能です。
しかし、その場合には、家庭裁判所から売却許可決定が必要となります。
財産を活かすためには生前対策が必要
上記のような不都合を回避するためには、「元気なうちに」対策をすることが必要です。
「今は元気だから、まだ大丈夫」と後回しにして、認知症などで精神上に障害が生じてしまっては手遅れです。
今のうちから、対策をされることをオススメいたします。
「資産なんてない」「遺す財産なんてない」と思われて、躊躇されている方がいらっしゃるかもしれませんが、ご自身で気付いていなかったり、見えていない部分があるかもしれません。
一度、専門家へご相談されることをオススメいたします。
生前対策とはどのようなものがあるのか?
家族関係や財産の内容により、人それぞれですが、次のような方法があります。
- 遺言書の作成
- 家族信託
- 生前贈与
- 任意後見契約
どのような対策が有効か、当事務所では、ご相談者様の状況を詳しくヒアリングしてから、ご提案いたします。
~お断り~
この記事は、決して現在の成年後見制度を否定するものではありません。
将来において、ご自身の財産を活用し、後の世代に遺すことを目的とした場合を前提に記載しております。
詳しくは、当事務所までご相談ください。
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