平成26年度以降、全国の法務局では、毎年、休眠会社・休眠一般法人の整理作業を行っています。
この整理作業によって、対象企業には法務局から通知が送られます。
通知に対して、何も返信しない(音信不通)または変更登記をしない場合は、「みなし解散」されます。
具体的には、次のような登記が、職権でなされます。
「平成29年12月13日会社法第472条第1項の規定により解散」
みなし解散とは?
株式会社(有限会社を除く)は少なくとも10年に一度は、何らかの登記を行うことが義務付けられています。
御社の会社組織形態や定款の規定にもよりますが、取締役または監査役の任期は、最長で約10年です。
就任してから任期満了となると、(そのまま取締役が継続するとしても)新たに取締役を選任し、その登記をしなければなりません。
そのため、12年以上、変更登記がされていない場合は、事業活動を行っていない(休眠)会社とみなされてしまいます。
このように登記を放置した結果、解散させられる場合を『みなし解散』と呼びます。
- 一般社団法人・一般財団法人も、株式会社と同様に、5年以上登記をしない場合にみなし解散となる制度があります。
- 12年以上登記を放置したら、すぐに『みなし解散』というわけではありません。前述のとおり、法務局で整理作業を行い、対象の会社へ通知が行われた結果、反応のない会社に対してのみ『みなし解散』の登記が入ります。
みなし解散された場合のデメリット
1.実務上の信用問題
例えば、新規の取引先に営業していたとします。
話がまとまりかけたときに、相手方企業は御社と取引して良いかの調査を行うことでしょう。その調査方法の一つとして、御社の登記簿をチェックします(登記簿は公開されている情報なので、手数料さえ払えば誰でも見れます)。
相手方企業が、御社の登記簿謄本に「解散」の文字を見つけたら、どう思われるでしょうか?
最悪の場合、せっかく営業して契約寸前まで進めたのに、破談になることも考えられます。
何とか破談は免れても、法律を守っていないない企業として、御社の信用に傷がつくかもしれません。
2.過料
会社は、会社法によって、一部を除き、原則2週間以内に登記しなければならない(義務)と規定しています。また、役員の任期は最長で10年(但し、定款の規定による)です。任期満了になると、役員を選びなおさないといけません。
みなし解散されたということは、役員を選任していない(「選任懈怠」といいます)か、選任していたとしても登記申請手続きを怠っている(「登記懈怠」といいます)のいずれかです。
会社法で定める規定に違反しますので、裁判所より過料が課せられる可能性があります。
なお、過料は代表取締役宛てに届き、税務上経費処理ができません。
みなし解散させられてしまったら・・・
事業を継続する場合
登記をしていないだけで、事業自体は継続している場合です。
御社の登記簿の「解散」状態を解消し、「継続」させる必要があります。
登記としては、大きく分けて3つの登記が必要になります。
- 清算人・代表清算人の選定(法定清算人)
- 会社継続
- 取締役の選任等
1.清算人・代表清算人の選定(法定清算人)
法定清算人とは、解散前の取締役・代表取締役がそのままスライドして、清算人・代表清算人になることです。
登記官の職権により、「みなし解散」の登記がなされても、清算人・代表清算人の登記まではされません。
したがって、次の会社継続の登記をする前提として、清算人・代表清算人の登記をしなければなりません。
なお、解散前の取締役の任期満了していた場合(権利義務取締役)であっても、権利義務取締役が法定清算人となります。
2.会社継続
株主総会を開催して、会社を継続させる決議をします。
その株主総会の招集するのは、上記1の清算人・代表清算人です。
3.取締役の選任等
みなし解散の登記がなされると、監査役を除く役員や取締役会設置会社の定め等の登記が抹消されます(つまり、退任したことになります)。
そのため、会社を継続させる場合には、継続後の会社の経営を担う取締役・代表取締役の選任したり、継続後の会社の機関設定(例えば、取締役会を置くなど)に応じた登記が必要になります。
通常は、上記1~3の登記を1つの申請でまとめて登記を行います。
会社に財産が残っている場合
会社が解散したら、そこで「終わり」ではなく、清算手続きに入ります。
清算手続きとは、解散時に残っていた会社の財産や負債を、きれいさっぱりゼロにする手続です。
そして、その清算手続きを行うのは、清算人です。
そのため、清算手続きとして、会社所有の財産等があり売却などの処分を行う場合は、「清算人及び法定清算人就任」の登記をしなければなりません。
「清算人及び法定清算人就任」の登記をした後に、会社所有の財産等を処分することになります。
みなし解散を防ぐ!
事前の予防が大事
とは言っても、法律(会社法・商業登記法)を勉強することは大変です。
一般の事業会社では利益を上げて、会社を存続させ、成長させることに、注力すべきと考えます。
信頼できる専門家(弁護士・司法書士等)と相談できる環境を作ることが大事です。
御社の法務部門のアウトソーシングとして士業を活用してみてはいかがでしょうか?
コメントをお書きください