一部の相続登記に係る登録免許税は免除されます(租税特別措置法第84条の2の3第1項及び同2項)。
当初、令和4(2022)年3月末までの期間限定の措置でしたが、3年間延長され令和7(2025)年3月末まで適用期間が延長されました。
今回の改定では適用期間の延長に加え、一部拡充の修正が加えられましたので、リライトいたします。
相続登記の登録免許税が免除される場合とは?
次のいずれかのケースに該当すれば、その登記申請に係る登録免許税は非課税となります。
- 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合において、その死亡した方への相続登記
- 不動産の価額が100万円以下の土地に係る相続登記
少し難しいので、以下に具体例を入れて説明します。
1.相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合において、その死亡した方への相続登記
租税特別措置法第84条の2の3第1項
要件
- 亡くなった方を所有者(所有権登記名義人)として土地に関する『相続』登記する場合
- 令和7年3月31日までに申請すること
具体例
Aは、甲土地と乙建物を所有しています。
平成26年3月3日、Aは亡くなりました。 (Aの相続人は、Aの長男Bのみです。)
平成29年7月3日、Bは相続登記をすることなく、亡くなりました。 (Bの相続人は、Bの長女Cのみです。)
なお、亡B、Cともに、相続放棄をしていません。
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解説
上記の例では、相続によりA→B→Cに所有権が移転していますが、登記簿上の名義はAのままです。
なお、この場合、特別な事情がなければ、司法書士はAからCへ直接所有権移転登記を申請しますが、本制度の説明上、次のように2件に分けて登記申請することとします。
1件目
目的 所有権移転
原因 平成26年3月3日相続
相続人 (被相続人A)亡B
2件目
目的 所有権移転
原因 平成29年7月3日相続
相続人 (被相続人B)C
通常、登記を申請する場合には、申請時に登録免許税を納付します。
相続の場合は、固定資産税評価額×4/1000で計算した額(下2桁切捨て)になります。
免除期間内(要件2)に申請すると、1件目は死亡したBを所有者とする登記申請であるため、要件1に該当します。
したがって、甲土地の登録免許税については本制度の利用が可能となり、非課税となります。
一方、2件目は生存しているC名義とする相続登記であるため、免除期間内に申請したとしても、要件1に該当しないため、通常とおり登録免許税を納付することになります。
ここで注意しなければならないのは、免税の対象となるのは土地だけです(要件1)。
したがって、1件目の相続登記では、甲土地は非課税、乙建物は通常とおり登録免許税を納付することになります。
2.不動産の価額が100万円以下の土地に係る相続登記
租税特別措置法第84条の2の3第2項
要件
- 『土地』の相続登記
- 土地の固定資産評価額が100万円以下であること
- 令和7年3月31日までに申請すること
解説
令和4年度の改正前は、市街化区域外の法務大臣が指定する土地であること、という要件がありました。
この要件に該当する土地は、概ね住宅地や商業地以外の地域にある土地です(※なお、詳しくは各自治体のホームページなどで調べます。)。
したがって、都市圏の土地は、ほぼ対象外となっていました。
今回の改正では、上記要件の撤廃に併せて、土地の固定資産評価額が10万円以下とされていたところ、100万円以下と拡充されました。
今回の改正により、相続登記における登録免許税が免除となるケースが増えることが見込まれます。
ただし、免除となるのは上記1と同様に土地だけなので、注意をしてください。
申請書への記載方法
申請書の登録免許税の欄に、
「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税(又は、一部非課税)」
或いは
「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税(又は、一部非課税)」
と書きます。
この非課税であることを記載しなければ、要件に該当しても登録免許税の納付を求められますので、忘れずに記載してください。
まとめ
お亡くなりになった方を所有者として登記することは、時々あります。
特に、数次相続(何代も相続手続きを放置していた)の場合に、登記することが多いです。
今回の免税措置は、特に長らく相続登記を放置した結果、何代にもわたり相続が発生し、相続登記が進まない不動産を何とか解消する目的で特例として認められた期間限定の措置です。
令和6年5月からは相続登記義務化がはじまります。
あくまでも期間限定の措置のため、これを機に、後の世代のために先祖代々の相続関係を解消してみてはいかがでしょうか?
なお、何度も記載しますが、免税されるのは『土地』のみのため、ご注意ください。
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