通常、所有権移転登記手続きには、義務者(所有権を譲る人)・権利者(所有権を譲り受ける人)の当事者双方からの申請が必要となります(以下、「共同申請」といいます。)(不動産登記法60条)。
その例外として、裁判によって、たとえば「被告は、原告に対して、別紙物件目録記載の不動産につき、平成年月日売買を原因とする所有権移転登記手続せよ」と記載された判決書があれば、権利者のみで登記名義変更手続き(以下、「単独申請」といいます。)ができます(不動産登記法63条)。
このように、裁判の判決に基づいて登記を行う方法を、判決による登記といいます。
判決による登記の必要書類
通常の共同申請の場合と判決による登記で単独申請する場合を比較すると次のとおりです(相続を除く、所有権の移転の場合)。
共同申請 | 判決による登記(単独申請) |
【権利者】
【義務者】
【その他】
|
【権利者】
【その他】
|
※1
判決書(確定証明書付)のほかに、次のものも使えます。
和解調書(裁判上の和解)、調停調書、審判書(家裁)
※2
原則として執行文は不要です。
例外は3つ(民事執行法174条)。
- 登記申請の意思表示が債権者の証明すべき事実の到来に係るとき(例:農地法の許可を条件とする)
- 登記申請の意思表示が反対給付との引換えに係るとき(例:原告が、被告に対して、100万円の支払があることが条件とする)
- 登記申請の意思表示が債務者の証明すべき事実がないことに係るとき(例:被告が、原告に対して、〇年〇月〇日までに、金1000万円を支払わないとき)
判決書正本を紛失したら・・・
判決による登記の場合は、裁判によって、登記義務者の登記申請意思が擬制されたことを証明するものとして「判決書正本(確定証明書付)」を添付して、法務局に申請します。
もし、いざ登記申請する際に、その判決書正本を紛失などにより手元にない場合はどうなるでしょうか?
もう1回裁判のやり直し?ではなく、
判決書正本の再交付申請をすることになります。
具体的には、判決を下した裁判所に対して、正本交付申請書を提出します。
どの裁判かを特定するため、「事件番号」が必要です。
その他、必要な情報として・・・
- 裁判時に、当事者として表記された住所が、引っ越しなどにより住所が変更していた場合には、その履歴が分かる住民票(法人の場合は登記簿謄本または閉鎖謄本)
- 判決から長年放置していたため裁判所が事件記録を廃棄していた場合は、本人からの申請であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。なお、申請書に押印する印鑑は実印となります。
まとめ
不動産の登記手続きは、義務ではありません。
したがって、いつでも登記申請は可能です。また放置していても、罰則があるわけではありません。
しかし、登記を放置した結果、相続や売却などで後日登記申請をしなければならない場合に、(多くのケースでは)面倒な手続きをしなければならない上に、かえって費用が高くなることがあります。
不動産の登記名義の変更は、できる時にすぐに対応されることをオススメします。
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