令和2年1月14日に運用を開始したQRコード(二次元バーコード)付き書面申請(以下「QRコード付き書面申請」といいます。)。
なかなか適した案件がなく、実際試してみるまで日数がかかりました。
当事務所の備忘録を兼ねて、QRコード付き書面申請について、まとめたいと思います。
※令和4年1月14日、一部編集
QRコード付き書面申請とは?
登記の申請の方法として、「書面申請」と「オンライン申請(電子申請)」の2種類があります。
QRコード付き書面申請は、「書面申請」の一つの形態です。
「申請用総合ソフト」と呼ばれる登記・供託などをオンライン申請(電子申請)をするためのソフトがあります。
従来、このソフトは、オンライン申請でのみ利用されてきました。
QRコード付き書面申請では、この申請用総合ソフトを利用して、オンライン申請のメリット(申請後の進捗管理、不動産の表示等の正確な入力)を活かしつつ、実体は書面申請というハイブリット型(?)の申請方法です。
そもそも書面申請とオンライン申請とは?
前述のとおり、登記の申請方法として「書面申請」と「オンライン申請」があります。
書面申請
書面申請とは、申請書もすべて書面で作成して申請する方法です。
申請書と添付書類を法務局に持参又は郵送する方法によって行いますので、法務局の申請窓口で書類を受取られた時点で受付番号が付きます。
なお、登録免許税の納付は、収入印紙でのみ行います。
オンライン申請
オンライン申請とは、前述の申請用総合ソフトを用いて、申請データをインターネットの仕組みを利用して申請する方法です。
申請書と添付書類のすべてを電子データで送信することも可能です。
しかし、完全にオンラインで申請する方法では、電子署名をしなければなりません。
司法書士であれば、ほぼ全員が電子署名(実印相当)できるでと思われますが、まだまだ一般的には浸透していません。
そこで、実際には申請書の内容と登記原因証明情報(PDF)のみを電子データで送信し、他の添付書類は郵送又は持参する方法が主流となっています。
オンライン申請の場合、法務局が申請書の内容等を受信したときに受付られますので、送信してから受付番号が付くまでの時差はほとんどありません。
急いで登記申請しなければならないような場合には、オンライン申請のほうが安全性は高いと言えます。
なお、登録免許税の納付は、収入印紙でもネットバンキングのいずれでも可能です。
なぜ司法書士は書面申請を行うのか?
登記は早いもの勝ちなので、オンライン申請のほうが優れています。
しかし、多くの司法書士がオンライン申請を利用していますですが、まだまだ書面申請は活用されています。
書面申請が重宝される理由としては、
- やっぱり紙で見たほうがミスが少ない!
- オンライン申請のやり方がわからない!(司法書士業界はローテクなので・・・)
- 書面のほうが慣れている!
- スケジュール的に、法務局に書面で持参したほうが早い!(事務所に戻って申請するより、法務局へ行く方が近い場合)
- 分かれの決済(いわゆる「京都方式」)では、書面申請のほうが確実で手間が省ける
などなど、様々なものがあります。
当事務所でも、原則はオンライン申請ですが、状況に応じて書面申請を活用しています。
※実績的には、ほぼ100%の確率でオンライン申請です。
これまでの書面申請と何が違うのか?
「QRコード付き書面申請」は、「書面申請」であることには変わりありません。
異なる点は、事前に申請用総合ソフトを利用して、申請内容のデータを送信することです。
申請フロー
- 事前に、申請用総合ソフトを利用して、申請内容を入力(申請書の作成)。
- 上記1のデータを送信(※この時点では受付されません)。
- 申請準備が整ったら、印刷したQRコード付きの申請書と添付書類を、法務局に持参又は郵送。
- 登記の完了。
メリット
- 物件や法人の入力に際して、申請用総合ソフト側でチェックができる(一部直接入力する必要はあります。)。
- 謄本のQRコードを利用できる(バーコードリーダーが必要です。)。
- 申請用総合ソフト上で、進捗状況が把握できる。
- 申請内容の補正であれば、申請用総合ソフトで対応可能(添付書類の補正は従来通り出頭となります。)。
- 電子署名不要。
デメリット
- QRコード付きの申請書に、申請人(またはこの代理人)の押印が必要。
- QRコード付きの申請書を法務局に持参又は郵送しなければならない。
- 受付番号は、法務局に申請書を提出したときに振られる。
- 利用者が少なく、実際上の使い勝手がよく分からない。
QRコード付き書面申請を利用上の注意点
実務的に気になる注意点としては、以下の点ではないでしょうか?
- 受付のタイミングは、QRコード付き書面申請書(書面)が、法務局に到達したときになる。
- 申請書に、申請人または代理人の欄に押印が必要。
- 申請データ送信時、登記識別情報を入力しなくてよい。
- 申請データ送信時、登記原因証明情報を添付しなくてよい。
なお、その他の情報は、法務局のホームページに記載していますので、詳しくはそちらをご覧ください。
共同代理で使えるか?
※マニアックな内容です。
不動産の取引において、買主側と売主側の司法書士が別の場合、買主側司法書士がオンライン申請に抵抗がなければ、復代理方式でオンライン申請をします。
しかし、買主側司法書士が書面申請を求める場合や、何らかの事情により復代理方式が利用できない場合(※1)には、共同代理方式を利用することになります。
共同代理方式の場合、書面申請を利用するのが多いと思いますが、このQRコード付き書面申請も利用できます。
※1 不動産決済であれば以下のようなとき場合に共同代理方式を選択しています。
売主本人が欠席の場合
売主が権利証(または登記識別情報)を提供できない場合
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