時効
ここでは、時効について、思いついた時にまとめていきたいと思います。
※留意事項
このブログは、備忘録的にまとめたものです。
時効期間を検討するにあたり、起算点はいつか?どの規定が適用されるか?については、個別具体的に判断します。判断するにあたり専門的な知識を要しますので、弁護士・司法書士などの専門家に相談されることをお勧めいたします。
時効と除斥期間
これまで「時効」という言葉を聞いたことや言葉に出して発言したことはあるかもしれません。身近でよく使われる法律用語ですが、時効の制度のことを知らない方がほとんどではないでしょうか?
また、時効と似た概念として、除斥期間があります。法律的には、両者を厳格に区別して考える必要があります。
時効
「取得時効」と「消滅時効」に分かれます。
- 取得時効
元々権原がなかったとしても、一定期間、平穏・無事に支配し続けることで、権利を取得する制度。
権原がないことを、知らなかった(善意)又は知っていた(悪意)のいずれかによって、取得時効の期間は異なる。
- 消滅時効
債権者(権利を主張する側)が、一定期間、その権利を行使しないことにより、権利が消滅する制度。
消滅時効の効果を確定させるためには、時効の「援用」が必要。
時効の更新(中断)事由が生じた場合には、期間はリセットされる(はじめからやり直し)。
除斥期間
一定の期間を経過すると請求する権利が消滅する期間のことです。
時効と似ていますが、時効の更新(中断)事由が生じても、除斥期間が経過すると消滅する点が異なります。
つまり、時効の更新(中断)事由が生じて、時効の期間がリセットされたとしても、除斥期間が経過すると、請求ができなくなります。
時効・除斥期間
【注意点】
期間の短いものから順に、端的に記していきます。
請求できる人の主観(知った時から)と客観(行為の時から)の2つの期間が定められている場合があります。
1か月
- 相続分取戻請求権【民法905条】
3か月
- 相続の放棄(又は限定承認)の申述【民法915条】
自己のために相続の開始があったことを知ったときから
- 受託者の権限違反行為の取消し【信託法27条】
受益者が、受託者の権限違反行為につき、取消原因を知った時から
1年
- 目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間制限【民566条】
不適合を知った時から1年以内に通知
- 使用貸借契約において、契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害賠償【民600条】
貸主が返還を受けた時から1年以内
- 使用貸借契約において、借主が支出した費用の償還請求【民600条】
貸主が返還を受けた時から1年以内
- 遺留分侵害額請求権【民1048条】
相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から
※除斥期間 相続開始時から10年
- 受託者の権限違反行為の取消し【信託法27条】
受託者の権限違反行為の時から
2年
- 賃金請求権・退職手当請求権以外の請求権【労働基準法115条】
災害補償
退職時等の証明
年次有給休暇(取得が可能となった時点から起算)
3年
- 不法行為による損害賠償請求権【民724条】
被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から
人の生命又は身体を害する不法行為の場合は、例外として5年
5年
- 債権等の消滅時効【民166条】
権利を行使することができることを知った時から
- 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権【民724条の2】
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効3年の例外規定
- 付加金の請求【労働基準法114条】
解雇予告手当、休業手当、割増賃金、年次有給休暇中の賃金を支払わない場合
労働者の請求により生じるもの
除斥期間
- 賃金請求権【労働基準法115条】
令和2年4月1日、2年から5年に変更
令和2年4月1日以降に賃金支払日が到来する賃金請求権について適用
(これ以前の賃金支払日のものは、2年のまま)
ただし、当分の間は3年
- 退職手当の請求【労働基準法115条】
令和2年4月1日、2年から5年に変更
10年
- 所有権の取得時効【民162条】
所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったとき
- 債権等の消滅時効【民166条】
権利を行使することができる時から
- 定期金債権の消滅時効【民168条】
債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から
※各債権を行使することができる時から20年間行使しないときも消滅
- 判決で確定した権利の消滅時効【民169条】
確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利
※10年より短い時効期間の定めがあっても、10年となる。
- 買戻しの期間【民580条】
最大10年(特約でこれより長い期間を定めたとしても10年)。
※延長不可。
※買戻期間を定めなかったときは、5年以内。
- 遺留分侵害額請求権【民1048条】
相続の開始の時から(除斥期間)
※時効
相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年
20年
- 所有権の取得時効【民162条】
所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有している場合
- 債権又は所有権以外の財産権の消滅時効【民166条】
権利を行使することができる時から
- 定期金債権の消滅時効【民168条】
各債権を行使することができる時から
- 不法行為による損害賠償請求権【民724条】
不法行為の時から(除斥期間)
【参考】民法改正前の時効期間
平成29年の民法改正(令和2年4月1日施行)により、変更又は廃止となった時効期間を、ご参考までに記載いたします。
※留意事項
経過措置により、施行日前に債権が生じた場合は従前の例による(旧法が適用)とされています。
上記改正により削除された規定は、「旧」を付けてと表示します。
短期消滅時効
- 1年(旧民法174条)
- 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
- 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
- 運送賃に係る債権
- 旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
- 動産の損料に係る債権
- 2年(旧民法172条、173条)
- 弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権(その原因となった事件が終了した時から起算)
- 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
- 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
- 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権
- 3年(旧民法170条)
- 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
- 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
商事債権
- 5年
商行為によって生じた債権(商法522条)
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